あめのひ
2003年1月20日その日は雨が降っていた。
私がバス停でバスを待っていると、
「ミイコさん、こんにちは。」
振り返ると、そこにはハムスターがいた。
「ハムスターさん、こんにちは。
どこかでお会いしましたっけ?」
「いえいえ、風の噂ですよ。」
バスが来た。
私とハムスターはバスに乗った。
「ハムスターさんはどこへ行くんですか?」
私はハムスターに尋ねた。
「人間を捨てて、故郷に帰ろうと思ってます。
最近の人間は飼うのが大変ですから。」
「ハムスターさんの故郷はどこなんですか?」
「ペットショップです。」
ペットショップ前のバス停でバスが止まった。
私とハムスターはバスを降りた。
「ハムスターさん、さようなら。」
「ミイコさん、またいつか。」
−−−−−−−−−−−−−−−
その日も雨が降っていた。
私がバス停でバスを待っていると、
「ミイコさん、こんにちは。」
振り返ると、そこにはこの間のハムスターがいた。
「ハムスターさん、こんにちは。
今日はどこへ行くんですか?」
「今日は《ヨーチエン》というところへ出張です。」
バスが来た。
私とハムスターはバスに乗った。
「ハムスターさんはどんな仕事をしているんですか?」
私はハムスターに尋ねた。
「人間の世話をする仕事です。」
「楽しいですか?」
「大変ですが、やりがいのある仕事です。」
《ヨーチエン》前のバス停でバスが止まった。
私とハムスターはバスを降りた。
「ハムスターさん、がんばってください。」
「ミイコさん、ありがとう。」
−−−−−−−−−−−−−−−
その日もやっぱり雨が降っていた。
私がバス停でバスを待っていると、
「ミイコさん、こんにちは。」
振り返ると、そこには犬がいた。
「犬さん、こんにちは。
どこかでお会いしましたっけ?」
「いえいえ、ハムスターさんからよくお話をお聞きしておりまして。」
バスが来た。
私と犬はバスに乗った。
「犬さんはどこへ行くんですか?」
私は犬に尋ねた。
「ハムスターさんのお墓参りです。」
「ハムスターさんは亡くなられたのですか。」
「はい。いわゆる《労働災害》というやつです。」
幼稚園前のバス停でバスが止まった。
私と犬ははバスを降りた。
幼稚園の校庭の隅に、小さな小さなお墓があった。
「死因は、全身を激しく床にぶつけたショック死だそうです。」
犬がお墓にタンポポの花を添えて静かに言った。
「ミイコさん、命とは本当にはかないものですね。」
「犬さん、本当にそうですね。」
その日は《あめのひ》だった。
私がバス停でバスを待っていると、
「ミイコさん、こんにちは。」
振り返ると、そこにはハムスターがいた。
「ハムスターさん、こんにちは。
どこかでお会いしましたっけ?」
「いえいえ、風の噂ですよ。」
バスが来た。
私とハムスターはバスに乗った。
「ハムスターさんはどこへ行くんですか?」
私はハムスターに尋ねた。
「人間を捨てて、故郷に帰ろうと思ってます。
最近の人間は飼うのが大変ですから。」
「ハムスターさんの故郷はどこなんですか?」
「ペットショップです。」
ペットショップ前のバス停でバスが止まった。
私とハムスターはバスを降りた。
「ハムスターさん、さようなら。」
「ミイコさん、またいつか。」
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その日も雨が降っていた。
私がバス停でバスを待っていると、
「ミイコさん、こんにちは。」
振り返ると、そこにはこの間のハムスターがいた。
「ハムスターさん、こんにちは。
今日はどこへ行くんですか?」
「今日は《ヨーチエン》というところへ出張です。」
バスが来た。
私とハムスターはバスに乗った。
「ハムスターさんはどんな仕事をしているんですか?」
私はハムスターに尋ねた。
「人間の世話をする仕事です。」
「楽しいですか?」
「大変ですが、やりがいのある仕事です。」
《ヨーチエン》前のバス停でバスが止まった。
私とハムスターはバスを降りた。
「ハムスターさん、がんばってください。」
「ミイコさん、ありがとう。」
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その日もやっぱり雨が降っていた。
私がバス停でバスを待っていると、
「ミイコさん、こんにちは。」
振り返ると、そこには犬がいた。
「犬さん、こんにちは。
どこかでお会いしましたっけ?」
「いえいえ、ハムスターさんからよくお話をお聞きしておりまして。」
バスが来た。
私と犬はバスに乗った。
「犬さんはどこへ行くんですか?」
私は犬に尋ねた。
「ハムスターさんのお墓参りです。」
「ハムスターさんは亡くなられたのですか。」
「はい。いわゆる《労働災害》というやつです。」
幼稚園前のバス停でバスが止まった。
私と犬ははバスを降りた。
幼稚園の校庭の隅に、小さな小さなお墓があった。
「死因は、全身を激しく床にぶつけたショック死だそうです。」
犬がお墓にタンポポの花を添えて静かに言った。
「ミイコさん、命とは本当にはかないものですね。」
「犬さん、本当にそうですね。」
その日は《あめのひ》だった。
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