ゆきだるま

2003年1月30日
雪が降ったので、ヒビキといっしょに雪だるまを作った。

ごろごろごろ

雪玉を転がす。

「あー、《自動雪だるま製造機》作りたくなってきたー。」
「・・・雪だるまは自分で作るから楽しいんじゃないの?」
「そっか。」

ごろごろごろ

まだまだ転がす。

「ねえ、やっぱり《自動雪だるま製造機》作っていい?」
「やめとけ。失敗するだけだ。」
「冷たい反応だね・・・。」
「雪の日だからね。」

ごろごろごろ

ひたすら転がす。

「あー・・・腰痛い。
こんなときに《自動雪だるま製造機》があったらなぁ・・・」
「あっ、また雪が降ってきたよ。」
「無視かよ。」

ごろごろごろ

だいぶ大きくなった。

でもよく考えれば頭を作っていなかった。
だから結局雪玉はかまくらになった。

ちょっとした雪国の人になった気分だった。

立ち読み

2003年1月29日
私がデパートの本屋で《週刊あさま山荘》を読んでいると、
アイスクリーム屋の前で写真を撮りまくっているおっさんがいた。
それも10から15歳ぐらいの少年少女ばかり。
シャッターを切るたびにニヤニヤと笑みを浮かべている。


キモイですよおっさん。


するとそこに若い男が来て
「おいオッサン!なにニヤニヤしてんだよ!?健全な少年少女の写真をとってどうするつもりだよ!?だいたいあんたみたいなクズ人間がいるからこの日本はクズみたいな国になったんだよ!!わかってんのか、おい、コラ。どうせ『萌えー』とかいう感覚で撮ってるんだろ!?寝る前に写真にキスするような存在自体寒い人間なんだろ!?貴様は。どうせそんなハゲ頭になるまで奥さんできなくて寂しいからこんなキモイ人間にしかできないマネをしたんだろ!?あぁ!?このロリコン!!あんたみたいなクズは一生家に引きこもってた方が社会のためになるんだ!!わかってんのか!?このショタコン!!ハゲ!!なんだよその目は!?このゴミ人間!!そんなんだからリストラされるんだよ!!」

若者はこれだけのことを一気に喋った。
息が長いなと思った。

クロイさん

2003年1月25日
私がぜんざいを食べていると、

ぴんぽーん

誰か来た。
近頃妙な来客ばかりなので無視していると

ぴんぽんぴんぽんぴーんぽーん

連打ですか。
連打してでも私に会いたいんですか。

とりあえず出てみた。
「はい。」
「やっほー。クロイだよー。」
「えっ?あのクロイさん?」
「そうだよ。あのクロイだよー。」

とりあえず上がってもらって、
あまっていたぜんざいを出した。

「ありがとー。ミイコ全然かわってないねー。」
「クロイさんも全然かわってないよー。」

私とクロイさんは昔の話で盛り上がった。

「ところでさー、クロイさんって今なにやってるの?」
「え?」
「あの時、《私は世界一の弓手になる!》って言ってでていったでしょ。」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・あのさ、ミイコ。」
「何?クロイさん。」
「あのね。実はあたし・・・死んでるんだ。」
「やっぱり・・・。足が透けてるもん。」
「それでもあたしはあんたに会いたかったんだ。
世界一の弓手になれたよって言いたかったんだ。」
「・・・」
「もうあたし、行くよ。
言いたいこと言ったから。
あたしはここにいてはいけないから。」
「うん。私、クロイさんのこと、忘れない。」
「あたしもミイコのこと忘れない。」

クロイさんは消えた。
クロイさんがいた場所には、クロイさんが大切にしていた小さなぬいぐるみが落ちていた。

ぜんざいはすっかり冷えていた。

月刊ささかまぼこ

2003年1月23日
今日は《月刊ささかまぼこ》の発売日だった。
発売日だったので、私は本屋に買いに行った。
いつもの通り月刊ささかまぼこを手に取りレジへ行った。

「470円です。」
「は?」
「470円です。」

あれ?月刊ささかまぼこは440円のはず。
値上げしたのか?

「え?」
「470円です。」

本の表紙を見てもやっぱり440円。

「お?」
「470円です。」
「あの・・・440円って書いてあるんですが。」
「470円です。」

私のうしろにはどんどん人が並ぶ。
小さな店なのでレジが1つしかないのだ。

「・・・」
「470円です。」
「あの・・・その30円は一体なんなのですか?」
「本体料金は440円で30円はチップです。」
「え?チップ?」
「レジを打つためには30円分のエネルギーが必要なのです。」
「はあ。」
「したがって、470円です。」

そんなこと言われても、私は440円しか持っていない。
仕方ないので月刊ささかまぼこをあきらめた。

寒かったので自動販売機で《缶ラーメン》とやらを買ってみた。
食べにくかった。

灯火の祭り

2003年1月21日
「お嬢さん、こんばんは。」
カボチャのお面をかぶった男が言った。
「うわぁ、何なんですか。私今入浴中ですよ。」
「わかってますよ。それより今夜は灯火祭りです。」
「・・・はあ。」
「あなたの家の庭で開催しているので是非お越しください。」

おかしい。
うちの猫の額のような庭で祭りなど開けるはずがない。
このカボチャ仮面は何を言っているのだろうか。

「はい、コレ。入場券です。」
「祭りなのに入場券がいるんですか?」
「人間は選ばれた者しか入れないからです。」
「・・・ところであなたのそのカボチャのお面はハロウィンの仮装か何かでしょうか。」
「違います。ちなみにこれは仮面です。」
「もう一つ聞いていいですか。」
「はいどうぞ。」
「あなた、変態ですか?」
「いいえ、違います。」
「そうですか。」
「それでは、祭りに行かなければ。

とうっ!」

カボチャ仮面は消えた。

灯火祭りの入場券には幻想的な風景が描かれていた。


「お嬢さん、こんばんは。
灯火祭りにはいらっしゃってくださらないのですか?」
カボチャ仮面が来た。

この寒空の下の祭りなんて行きたくない。

「祭りに来ていただけないのでしたら、
入場券は返却してください。」
「はい、返却します。」
私は即座に答えた。
「しかし返却には返却料が必要です。」
「返却するのにお金がいるんですか。」
「はい。3900べぽらーです。」
「・・・《べぽらー》って何ですか。」
「日本円で言うとだいたい6万円です。」
「・・・普通に高いですね。」
「これでも格安です。」

返却するのに6万円も支払うのもバカバカしいので、
私は素直に灯火祭りに行った。
寒かったが、屋台のたこ焼きがおいしかった。

まあこういうのも悪くないかな。

あめのひ

2003年1月20日
その日は雨が降っていた。

私がバス停でバスを待っていると、
「ミイコさん、こんにちは。」

振り返ると、そこにはハムスターがいた。
「ハムスターさん、こんにちは。
どこかでお会いしましたっけ?」
「いえいえ、風の噂ですよ。」

バスが来た。

私とハムスターはバスに乗った。
「ハムスターさんはどこへ行くんですか?」
私はハムスターに尋ねた。
「人間を捨てて、故郷に帰ろうと思ってます。
最近の人間は飼うのが大変ですから。」
「ハムスターさんの故郷はどこなんですか?」
「ペットショップです。」

ペットショップ前のバス停でバスが止まった。
私とハムスターはバスを降りた。

「ハムスターさん、さようなら。」
「ミイコさん、またいつか。」

−−−−−−−−−−−−−−−

その日も雨が降っていた。

私がバス停でバスを待っていると、
「ミイコさん、こんにちは。」

振り返ると、そこにはこの間のハムスターがいた。
「ハムスターさん、こんにちは。
今日はどこへ行くんですか?」
「今日は《ヨーチエン》というところへ出張です。」

バスが来た。

私とハムスターはバスに乗った。
「ハムスターさんはどんな仕事をしているんですか?」
私はハムスターに尋ねた。
「人間の世話をする仕事です。」
「楽しいですか?」
「大変ですが、やりがいのある仕事です。」

《ヨーチエン》前のバス停でバスが止まった。
私とハムスターはバスを降りた。

「ハムスターさん、がんばってください。」
「ミイコさん、ありがとう。」

−−−−−−−−−−−−−−−

その日もやっぱり雨が降っていた。

私がバス停でバスを待っていると、
「ミイコさん、こんにちは。」

振り返ると、そこには犬がいた。
「犬さん、こんにちは。
どこかでお会いしましたっけ?」
「いえいえ、ハムスターさんからよくお話をお聞きしておりまして。」

バスが来た。

私と犬はバスに乗った。
「犬さんはどこへ行くんですか?」
私は犬に尋ねた。
「ハムスターさんのお墓参りです。」
「ハムスターさんは亡くなられたのですか。」
「はい。いわゆる《労働災害》というやつです。」

幼稚園前のバス停でバスが止まった。
私と犬ははバスを降りた。

幼稚園の校庭の隅に、小さな小さなお墓があった。
「死因は、全身を激しく床にぶつけたショック死だそうです。」
犬がお墓にタンポポの花を添えて静かに言った。
「ミイコさん、命とは本当にはかないものですね。」
「犬さん、本当にそうですね。」

その日は《あめのひ》だった。

みずでっぽう

2003年1月19日
私が蕎麦を食べようとすると、

ピンポーン

インターホンが鳴った。


「はい。」
「こんにちわー。水鉄砲屋でーす。」
「水鉄砲屋さん?聞いたこと無いですね。」
「はい。最近この国に来たばっかりでして。
モナコでは有名な水鉄砲屋です。」
「はあ・・・。」
「お嬢さん、水鉄砲いりませんか?」
「季節外れなのでやめておきます。」
そう言って、私は少し冷めた蕎麦をすすった。

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